蕾が見る花咲く夢

今日は奥若蕾ちゃんとピクニックに出かけました。
「光莉お姉様、しっかり捕まっていてくださいね」
「う、うん・・・」
自転車の荷台に乗っていた私は、蕾ちゃんの両肩を持つ手に力を入れました。ちょっと怖いのですが、走っている途中で風の妖精さんが頬や髪を撫でてくれるので、とても気持ちいいです。
蕾ちゃんって、私よりも小さいのに二人乗りができるなんてすごいわ。
私を乗せて平然と自転車を漕ぐ蕾ちゃんの背中を見ながら感心してしまいました。私には絶対真似できません。ひとりで坂道を上がることすらできませんから。
蕾ちゃんは日本でも指折りの歴史ある名家の生まれなので、自転車で迎えに来たときは正直驚きました。てっきり車で行くものだと思っていましたから。でも、こうしてお日様の光を浴びながら自然の美しい風景をゆっくり見られるのですから、蕾ちゃんの選択はよかったと思います。
「光莉お姉様の体って、とても柔らかくていい匂いがしますね。夜々お姉様が執着する気持ちがよく分かります。なんか私も夜々お姉様みたいな気分になりそうです」
「ちょっと蕾ちゃん・・・」
「フフフ、冗談ですよ」
「もうっ、蕾ちゃんったら」
私が抗議の声を上げると、蕾ちゃんは愛らしい笑い声を上げました。
和やかな空気の中、私たちを乗せた自転車は軽快に進んでいきました。
「ここからは坂道になりますので、すみませんが一端降りてください」
蕾ちゃんが丘へ続く道の前で自転車を止めました。そうですよね。元気いっぱいの蕾ちゃんでも、さすがにふたり乗りで、坂道を上るのは無理ですよね。
「うん。それじゃあ、自転車を押すのを手伝うわ」
「ありがとうございます」
私たちは仲良く自転車を押して、丘の頂上を目指して歩きました。
坂道を上り終えると、そこには色とりどりの花が咲き乱れていました。まるで天使様たちが集まる楽園のようでした。
「綺麗・・・」
自然の花畑にしかない美しさに魅せられ、私は感嘆のため息をつきました。
「ここは知っているひとがほとんどいないピクニックの穴場なんですよ。気に入って頂けて何よりです」
蕾ちゃんは私の隣に立って無邪気な笑顔を浮かべました。
「光莉お姉様。実は私、光莉お姉様とエトワール選に出る天音お姉様のことがうらやましいって思っているんですよ」
「え?」
驚いて視線を下げると、真面目な顔をした蕾ちゃんの顔がありました。
それってどういうこと?「天音お姉様」ではなく「光莉お姉様」の間違いじゃないのかしら?
普通に考えるのなら、そうなるはずです。だから、私は思わず聞き返しました。
「あの、それって逆じゃないの?」
私の言葉に蕾ちゃんはやんわりと首を横に振りました。
「やだなあ、光莉お姉様ったら。何も間違っていませんよ。言葉どおり天音お姉様がうらやましいんですよ。でも、私じゃどうあがいても天音お姉様には勝てませんから、今年はあきらめて、スピカの生徒としてお姉様方を精一杯応援することにします。でも、来年は、私が光莉お姉様のカデット候補になって、光莉お姉様とともにスピカを栄光の座へ導きたいです!それが今の私の夢ですから」
「蕾ちゃん・・・」
蕾ちゃんの可愛い口から飛び出した予想外の言葉に私はびっくりしました。
そうなんだ。蕾ちゃんは来年、私と一緒にエトワール選に出たいんだ。
ちょっとだけふたりでエトワール選に出たときのことを想像してみました。蕾ちゃんがおろおろする私を懸命にサポートしてくれる光景が浮かび上がりました。
想像の中でも私は頼りないんですね・・・
そんな自分にガッカリです。でも、うまくバランスがとれたいいカップルのように感じました。
蕾ちゃんの夢を叶えるのはまず私が来年エトワールでエネ候補にならなければいけないのですが、はっきりいって自信がありません。だって、私よりも凄い方がたくさんいますから・・・でも、蕾ちゃんのためになってみたいっていう気持ちになりました。
「来年エトワール・エネの候補になれるか分からないけど、蕾ちゃんの夢のために頑張るわ」
無意識のうちにそう言ってしまいました。きっとこれが今の私の素直な気持ちなのでしょう。
「光莉お姉様なら絶対に大丈夫です。だって、お姉様はまず今年カデットになって、その実績を引っさげて来年は私とともにエトワール選に出て、エトワールになるって信じていますから。私も今からお稽古ごとをたくさんこなして、光莉お姉様に相応しいカデット候補を目指しますから、来年は私と一緒にエトワール選に出てください。お願いします」
そこにはいつもの明るい蕾ちゃんはいなくて、私が今まで知らなかった蕾ちゃんがいました。
私は蕾ちゃんの夢を叶えてあげられのだろうか?
ふとそう思いましたが、すぐに打ち消しました。
何弱気なこと言ってるの!私の力で蕾ちゃんの夢を叶えてあげなきゃダメじゃない!
私は自分自身を叱咤激励しました。先輩の私がそんなことをかんがえてはいては、蕾ちゃんの夢は蕾のままで終わってしまいます。だから、私は太陽となって、可愛い後輩を照らして花を咲かせてあげなくてはならないのです。
気がつけば、私の中で強い気持ちが生まれていました。天音様や夜々ちゃんと一緒にいるときは、こんな気持ちになったことはありません。きっと相手が蕾ちゃんだから、そうなったのだと思います。
「分かったわ。私がエネ候補になったら、蕾ちゃんをパートナーに選ぶって約束するわ」
「うわあ!ありがとうございます!」
蕾ちゃんは満面の笑みを披露しながら、私に抱きついてきました。今度はいつも以上にハイテンションな蕾ちゃんになったようです。
「きゃっ」
私はその勢いの耐え切れず、蕾ちゃんと一緒に花畑の中に倒れ込みました。
「光莉お姉様、約束忘れないでくださいね」
「うん」
甘い花の香りに包まれた私たちは、抱き合いながら夢の世界へと旅立ちました。




あとがき


今回もRiaさんから頂いたイラストに合わせてサイドストーリーを書きました。
最近気になっていた蕾ちゃんのストーリーが書けて、自分も結構楽しめました。ただ、蕾ちゃんについてはどんな子なのか、イマイチつかめていない部分がありますので、もし違っている部分とかあったら指摘してください。
はなしは変わりますが、夏の制服はこのスピカの制服が一番好みだったりします。冬は断然ル・リム派なんですが・・・
誰ですか、この制服マニアとか言っているのは?まあ、そのとおりですけど(オイ
夏ももうすぐ終わりですので、なんとかRiaさんのこのイラストに合わせる作品ができて安堵しています。
蕾ちゃんのSSはオンオフ含めて初めてなので、ストパニのSS目当てで来られた方には新鮮で楽しめるのではないかと思料しています。

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